⭐️たくさんの頼れる場所があること。それが本当の自立

「自立とは、たくさんの依存先を作ることである」——熊谷晋一郎先生の言葉から考える、本当の自立とは?

「自立とは、たくさんの依存先を作ることである。」

この言葉は、脳性麻痺の障害を持つ小児科医であり、東京大学先端科学技術研究センターの准教授である熊谷晋一郎先生 のものです。

一般的に「自立」と聞くと、「誰の力も借りずに生きること」と思われがちですが、熊谷先生の言葉はその考え方とはまったく異なります。本当の自立とは、「たくさんの支えを持ち、柔軟に助けを求められる状態」 であるという考え方です。


⭐️「自立=一人で頑張ること」ではない

多くの人は「自立」という言葉を聞くと、「誰にも頼らずに、一人で生きていくこと」と思いがちです。しかし、それは非常に苦しく、現実的ではありません。

人は生きていくうえで、必ず誰かに頼らなければなりません。

  • 子どもは親に頼る
  • 患者は医師に頼る
  • 社員は会社に頼る
  • 経営者は従業員に頼る
  • 友人同士も支え合う

どんなに能力が高い人でも、社会で生きていく以上、「完全に一人で生きる」ことはできない のです。


⭐️熊谷晋一郎先生の経験:「依存すること」こそが自立につなが

熊谷先生は、生後すぐに高熱を出したことが原因で脳性麻痺となり、中学生の頃から車椅子を使用されています。

大学進学を機に一人暮らしを始めた際、最初は「誰にも迷惑をかけずに生きていかなければ」と考えていたそうです。しかし、一人で何もかもやろうとすると、むしろ生活がうまく回らなくなってしまった。

そこで、「誰かに頼ることを恐れず、できるだけ多くの人とつながり、助けを借りることが大切だ」と気づいたのです。

その経験から、熊谷先生は 「自立とは、依存しなくなることではなく、依存先を増やすこと」 だと考えるようになりました。


⭐️「依存先を増やすこと」が自立につながる理由

① 依存先が多いと、精神的に安定する

もし、頼れる人が一人しかいなかったら、その人がいなくなったとき、大きな孤独や不安に襲われます。
でも、複数の人や支援を持っていれば、一つがなくなっても他の支えがある ので、安定した気持ちでいられます。

② いろいろな人の力を借りることで、より良い選択ができる

一人で考えるよりも、いろいろな人の意見を聞いたほうが、物事をより広い視野で考えることができます。
例えば、車椅子のお医者さん自身も、一人で医療を学ぶのではなく、多くの人のサポートを受けながら成長し、今の自分を築いてきたのではないでしょうか。

③ 「助けを求める力」が、真の自立につながる

多くの人が「自立=頼らないこと」と思いがちですが、実は 「適切な助けを求める力」こそが、本当の自立」 です。
本当に自立している人は、必要なときに迷わず人に頼ることができます。


⭐️「助けてもらう」ことを恐れない

日本では、「人に迷惑をかけないこと」が美徳とされています。しかし、「誰にも迷惑をかけない生き方」など、現実には存在しません。
むしろ、お互いに迷惑をかけながら生きるのが当たり前 であり、それを認めたうえで「どうやって支え合うか」が大切なのです。

「自立」とは「誰にも迷惑をかけないこと」ではなく、「お互いに支え合える関係を築くこと」 なのです。


⭐️熊谷晋一郎先生の「当事者研究」と自立の関係

熊谷先生は、「当事者研究」という活動にも取り組んでいます。

「当事者研究」とは、自分の困難や苦しみを一人で抱え込むのではなく、同じような経験をした人たちと共有し、知恵を出し合いながら生きる方法を探るものです。

この考え方も、「一人で解決しようとせず、さまざまな人とつながることで生きやすくなる」ことを示しています。

つまり、「自立=たくさんの依存先を作ること」 という考え方は、個人の生き方だけでなく、社会全体にも当てはまるのです。


⭐️まとめ:「頼れる場所を増やすこと」が本当の自立

本当の自立とは「たくさんの依存先を持つこと」
頼れる人が多いほど、精神的に安定しやすい
一人で頑張るのではなく、適切に助けを求める力が大切
「迷惑をかけないこと」より、「お互いに支え合うこと」が大事

熊谷先生の言葉は、「自立とは、一人で頑張ることではなく、いかに多くのつながりを持ち、必要なときに助けを求められるか」を教えてくれます。

「自立」という言葉の意味を考え直すと、「一人で頑張ること」にこだわる必要はなくなります。むしろ、「多くの人とつながり、助けを受けながら生きること」が、もっとも自立した生き方なのかもしれません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次