心理学者の三大巨匠、アルフレッド・アドラーは、人を褒めることを否定していました。子育てでも子供を褒めることを否定します。ではどうすればよいのか?アドラーは褒めるよりも「認める」ことを大切にしました。
「褒める」という行為は、上から下への評価になりがちです。「すごいね」「えらいね」と言うと、子どもは「親に認めてもらうために頑張る」という動機づけになります。それは他者の期待に応えようとする「他者評価」のクセを育ててしまう危険があります。
一方、「認める」というのは子ども自身の努力や存在をそのまま受け止めることです。たとえば「最後までやったんだね」「工夫したんだね」「あなたらしいね」というように、評価ではなく観察した事実を伝えます。これは「自分で自分を評価できる力(自己評価)」を育てる助けになります。
アドラー心理学では、子どもを「対等な仲間」として尊重することを重視します。親が評価者ではなく、協力し合うパートナーになるのです。子どもの成長を一緒に喜び、努力を一緒に味わい、安心できる関係を築くことで、子どもは「自分には価値がある」と感じられるようになります。
つまり、子どもを褒めるのではなく、子どもの行動や感情を認め、共感し、対話を重ねること。それがアドラーの勧める子育ての基本姿勢です。
⭐️「褒める」と「認める」の違い
- 褒める=評価する
「すごいね」「えらいね」「よくできたね」など、相手の行動を良いと判断して伝えること。- ◎短期的にやる気が出る
- △評価者(親、先生など)の価値基準に依存する
- △「褒められたいからやる」動機になりがち
- 認める=存在や事実をそのまま受け止める
「やったんだね」「頑張ってたね」「そこにいたね」「そう思ったんだね」と、相手の行動や気持ちを評価抜きで言葉にして返すこと。- ◎相手自身を尊重する
- ◎「自分で自分を大事にする力」を育てる
- ◎「失敗も含めて大丈夫」という安心感
⭐️どうすれば「認める」になるのか?
褒めるときと同じくらいシンプルですが、視点が違います。
① 評価を加えず事実を言葉にする
- 褒め: 「すごいね」「えらいね」
- 認め: 「できたね」「終わったね」「やってたね」
例:
子どもが絵を描いた
- 褒める:「上手だね!」
- 認める:「たくさん描いたんだね」「青をいっぱい使ったんだね」
② 相手の気持ちを受け止める
- 「悔しかったんだね」
- 「それが好きなんだね」
- 「嫌だったんだね」
評価や指示を加えず、「あなたはそう感じたんだね」と返す。
③ 存在そのものを肯定する
- 「いてくれてうれしいよ」
- 「ここにいるね」
- 「あなたがいると助かるよ」
「何かをしたから」ではなく、「いてくれること」を認める。
⭐️「認める言葉」の具体例
| シーン | 褒める | 認める |
|---|---|---|
| 片付けをした | えらいね! | 片付けてくれたんだね |
| 勉強した | すごいね! | 机に向かってたんだね |
| 泣いた | 泣かないで | 泣きたくなるくらい悲しかったんだね |
⭐️ なぜ「認める」が大事?
- 相手が「自分はこのままで大丈夫」と思える
- 他者評価に依存しなくなる
- 失敗も含めて自分を受け止められる
特に子どもや部下など、成長過程にある人には「褒められるためにする」より「自分で決めてする」力を育てる土台になります。
⭐️ コツ
- まず「相手をよく見る」
- 評価を手放して「そのまま伝える」
- 沈黙を恐れず「受け止める」
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