⭐️「待てない」「すぐ手が出る」には理由があります 〜わかっているのに止まれない、衝動性と脳のしくみ〜

目次

どうしてそうなるの?

「ダメって言われたらわかってるはずなのに、どうしてまた手が出るの」「何度言っても、同じことを繰り返す」——そんな場面に心当たりのある方も多いと思います。でもこれは、しつけが足りないからでも、本人がわがままだからでもありません。小さな子どもの脳は、まだ「できあがっている途中」だからです。

感情や「やりたい」という気持ちを生み出す部分は、生まれてすぐの時期から活発に働いています。一方で、その気持ちにブレーキをかける部分は、脳の中でいちばんゆっくり育つ場所のひとつです。つまり、気持ちを生み出すアクセルはとっくに動いているのに、それを抑えるブレーキだけがまだ未完成という、アンバランスな状態が幼児期なのです。

アクセルは育っているのに、ブレーキがまだ弱い

「押したい」「触りたい」という気持ちにブレーキをかける力は、4〜6歳頃から少しずつ育ち始めます。思春期になるとだいぶしっかりしてきますが、実際に完成するのは20代前半頃。長い時間をかけて、経験を積み重ねながらゆっくり育っていく力です。だから「わかっているのに、つい手が出てしまう」のは、怠けているのでもわざとでもなく、ごく自然な発達の途中の姿なのです。

この時期の子どもにとって、「待つ」「我慢する」はまだ難しいことだと知っておくだけでも、大人側の気持ちは少し楽になります。できないことを責めるのではなく、「今はまだ育っている途中なんだ」という目で見てあげることが、支援の出発点になります。

「一番になりたい」気持ちについて

幼児期は、まだ相手の気持ちと自分の気持ちを切り分けて考えるのが難しい時期です。相手がどう感じているかより先に、自分がどうしたいかが前面に出やすく、だから「一番がいい」「褒められたい」という気持ちが強く出るのは、わがままではなく、やる気や自信が育っている証でもあります。

問題は気持ちそのものではなく、その表し方がまだ未熟なことです。「一番になりたい」が「押してでも前に出る」という行動にそのまま直結してしまうのは、気持ちと行動の間にあるブレーキがまだ弱いから。気持ちを否定するのではなく、同じ気持ちをどう表現すればうまくいくかを、少しずつ教えていくことが大切です。

体を動かすことが、いちばんの味方

衝動性が強い子にとって、体を動かすことは単なる気分転換ではありません。脳のブレーキそのものを育てる、いちばん身近な方法のひとつです。特別な道具や訓練がいらず、今日からすぐに取り入れられるという点でも、家庭や園でできる支援の中では取り組みやすい方法だと言えます。

なぜ運動が効くのか

走る・跳ぶ・ぶら下がる・押す引っ張るといった、体にしっかり力の入る遊びは、筋肉や関節、バランス感覚からの刺激をたくさん脳に送ります。これによって、興奮しすぎている状態も、逆にぼんやりして刺激を欲しがっている状態も、ちょうどよい落ち着きに近づきやすくなります。運動は脳への血の巡りもよくするので、「待つ」「ルールを守る」のブレーキ役も、一時的に働きやすくなります。運動の直後に、いつもより我慢がきく子が多いのはこのためです。

どんな動きが特に効果的か

ただ歩くような軽い動きより、体にしっかり負荷がかかる動きのほうが効果を感じやすいです。

・全身を使う:鬼ごっこ、トランポリン、ジャンプ
・引っ張る/押す:タオルの引っ張り合い、荷物運び、手押し車
・ぶら下がる/よじ登る:うんてい、ジャングルジム、木登り
・バランスを使う:平均台、ケンケンパ、でこぼこ道歩き

いつ・どのくらい取り入れるか

特に効果的なのは、座って集中力が必要な活動の前(朝の会の前、食事の前、椅子に座る学習の前など)に5〜10分ほど体を動かす時間を挟むことです。1日の中に1回だけでなく、朝・昼・夕方など複数回に分けて短く取り入れるほうが、1日通して落ち着きを保ちやすくなります。

効果を引き出すコツ

だらだら続く自由遊びより、「よーいどん」のように始まりと終わりがはっきりした活動のほうが効果的です。興奮したまま次の活動に移らないよう、最後に深呼吸やゆっくり歩く時間を一つ挟むと、気持ちの切り替えがスムーズになります。室内で体を動かしにくい日は、クッションを運ぶ、布団をたたむなど、家事の中の「力仕事」を手伝ってもらうだけでも似た効果が期待できます。

雨の日や室内でもできること

外に出られない日でも、工夫次第で同じような効果が得られます。クッションや布団の上でのジャンプ、毛布にくるまってゴロゴロ転がる、大きなぬいぐるみの引っ張りっこ、壁を両手で押す「壁押し」なども、体にしっかり力の入る動きです。短い時間でも構わないので、「今日は体を動かす時間がなかった」という日をなるべく作らないことが、積み重ねとして効いてきます。

毎日のスケジュールに組み込むのが大変に感じる日もあると思いますが、完璧を目指す必要はありません。「気づいたときに少し体を動かす」を続けるだけでも、子どもの落ち着きやすさは少しずつ変わっていきます。

これらは多くの子どもに見られる、年齢なりの発達の姿です。焦らず、長い目で見ていただければと思います。それでも気になることが続く場合は、ひとりで抱え込まず、様子を記録しながら、園の先生や保健センター、発達相談の窓口に相談してみると安心です。

一般的な発達の目安をまとめたものです。個別の診断や判断については、医療機関・発達相談の専門家にご確認ください。

アナスタシア子ども相談室
理学療法士 藤田陽彦

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次