⭐️偏食には理由があります 〜食べることは、全身を使う作業です〜

「白いごはんしか食べない」「野菜を見ただけで泣く」「口に入れてもすぐ出してしまう」。毎日の食事のたびに悩み、「私の育て方が悪いのかな」と自分を責めている方は少なくありません。

はじめにお伝えしたいのは、偏食の多くは、しつけの問題でも、お子さんのわがままでもないということです。食べることは、私たち大人が思っているよりずっと難しい作業です。お子さんは「食べない」のではなく、「食べられない理由がある」ことがよくあります。

食べることは「味」だけではありません

ひと口食べるあいだに、お子さんの体の中ではたくさんのことが同時に起きています。目で見て、においをかぎ、手やスプーンで口に運び、唇で受け取り、舌で動かし、歯で噛み、まとめて、飲み込む。そのあいだ、体をまっすぐ支え続けています。

このどこか1つでも苦手があると、その食べ物は「食べにくい物」になります。関わっているのは、主に次の感覚と体の働きです。

見た目(視覚)

色、形、混ざり具合。口に入れる前に、まず目で「安全かどうか」を確かめています。

におい(嗅覚)

味の感じ方の多くは、においが作っています。においに敏感だと、食卓に座ること自体がつらくなります。

味(味覚)

苦味や酸味は、もともと体が警戒する味です。子どもは大人より強く感じると言われています。

口の中の触覚

ぬるぬる、ざらざら、つぶつぶ、熱い、冷たい。口の中は、体の中でも特に敏感な場所です。

噛む力の感覚

どのくらいの力で噛むか、食べ物が口のどこにあるかを感じる感覚です。

口と飲み込みの筋肉

唇、舌、あご、ほお、のど。食べ物を噛んで、まとめて、送り込む動きには、練習と筋力が必要です。

姿勢と体幹

体がぐらぐらしていると、あごや舌を細かく動かす余裕がなくなります。

おなかの感覚

「おなかが空いた」「もういっぱい」に気づく感覚です。ここが弱いと、食べる気持ちが起きにくくなります。

これらは別々に働くのではなく、重なります。たとえば、ぬるぬるした食感が苦手で、さらに噛む力も弱いお子さんは、食べられる物が一気に少なくなります。

こんな様子には、こんな背景があります

お子さんがどの場面で食べられなくなるかを見ると、背景の手がかりになります。当てはまるものを探してみてください。

お子さんの様子考えられる背景
見ただけで拒否する。盛り付けやメーカーが変わると食べない見た目で安全を確かめている。「いつもと同じ」が安心の条件になっている
料理が混ざっていると食べない。別々なら食べる何が入っているか分からないと不安。口の中で複数の食感が混ざるのが苦手
食卓に近づかない。においで「おえっ」となるにおいに敏感
口に入れてから出す。ぬるぬる・つぶつぶを嫌がる口の中の触覚が敏感
肉や葉物を、噛んでいるうちに出す。口にため込む噛む・まとめる・送り込む動きがまだ難しい
やわらかい物ばかり食べる。あまり噛まずに丸飲みする噛む力や、あごの動きが育っている途中
硬い物、味の濃い物ばかり好む口の中の感覚が感じ取りにくく、はっきりした刺激を求めている
食事中に姿勢が崩れる。すぐ立ち歩く体を支えることに力を使っていて、食べることに集中できない
食べることに関心が薄い。少し食べるとやめる空腹や満腹に気づきにくい
以前は食べていたのに、急に食べなくなったむせた、吐いた、無理に食べさせられた、などの嫌な経験が残っている

1人のお子さんに、いくつも当てはまることがあります。また、新しい食べ物を警戒する気持ちは、幼児期に強くなるのが一般的です。これは成長の一部で、多くの場合は少しずつ和らいでいきます。

家庭でできること

背景がいくつもあるということは、入口もいくつもあるということです。どれか1つが楽になるだけで、食べられる物が増えることがあります。

1. まず、姿勢を整える

足の裏が床や台にしっかり着いていますか。足がぶらぶらしていると体が安定せず、噛む・飲み込む動きが難しくなります。足台を置く、背中にクッションを入れるなど、椅子を体に合わせるだけで食べ方が変わるお子さんがいます。

2. 無理に食べさせない

「ひと口だけ」と口に入れることは、短い目で見ると食べたように見えても、食事そのものを怖い時間にしてしまいます。食べなくても、同じ食卓にその食べ物があるだけで、慣れる練習になっています。

3. 小さな段階で近づく

食べるまでには、たくさんの手前の段階があります。見る、同じ皿にのせる、触る、においをかぐ、唇に当てる、なめる、かじって出す。どの段階でも「できたね」と認めてあげてください。出してもよいと分かっていると、試しやすくなります。

4. 食べられる物を土台にする

毎回の食事に、お子さんが食べられる物を必ず1つ入れます。そのうえで、形を変える、味付けを少し変える、似た食感の別の食材にするなど、少しだけ違う物へ広げていきます。

5. 食感と見た目を変えてみる

ぬるぬるが苦手なら焼いてカリッとさせる。噛み切れないなら小さく切る、やわらかく煮る。混ざるのが苦手なら、仕切りのある皿で分けて出す。同じ食材でも、形が変わると食べられることがあります。

6. 食事の前に体を動かす

体をしっかり動かすと、おなかが空き、姿勢も保ちやすくなります。食事の前に外遊びやお手伝いの時間を入れてみてください。だらだら食べやおやつの回数も見直すと、空腹を感じやすくなります。

7. 食事以外で、口と手の経験を増やす

シャボン玉、笛、ストローで吹く遊びは、口のまわりの筋肉を使います。粘土や砂、料理のお手伝いで食材に触ることも、食べる前の大切な経験になります。

保護者の方へ

食べてくれない日が続くと、作る側は本当に疲れます。栄養が足りているか心配になり、つい強い口調になってしまうこともあると思います。それは、お子さんのことを大切に思っているからです。

食べられる物が少なくても、食卓が安心できる場所であれば、食べる力は少しずつ育っていきます。今日食べなかったことより、今日も一緒に座れたことを見てあげてください。

こんなときは、早めに相談してください

  • 体重が増えない、または減っている
  • 食べられる物がとても少ない、または以前食べていた物が減り続けている
  • 肉や野菜など、食品のグループごと食べられない
  • よくむせる、飲み込みにくそうにしている
  • 食事のたびに吐く、強く嫌がって泣く
  • 便秘や腹痛が続いている

体の病気や栄養の不足が関わっていることもあります。まずはかかりつけの小児科に相談し、必要に応じて、発達相談の窓口や専門の機関につないでもらってください。

一般的な発達の知識をまとめたものです。個別の診断や判断については、医療機関・専門機関にご確認ください。
アナスタシア子ども相談室 理学療法士 藤田陽彦

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